乳首をめぐる冒険 3

 
 時代ごとに女の子の服がどんどん剥がれてきて、ついには「見せる下着」まで着ている。下着メーカーの努力により、女の子たちは下着を見られるのがそれほど恥ずかしくなくなってきている。少なくとも昔に較べれば、はるかに恥ずかしくなくなってきているのだと思う。
 思えば下着とは大いなるネックだったわけである。夏で薄着になった、Tシャツ1枚だ、キャミソールだけだ、などとのたまっても、その下には往々にしてブラジャーがあったのだ。このブラジャーというやつの安全性は信じられないほどのもので、乳首を完全にガードしている。よってたとえ女の子がTシャツ1枚であろうが、もちろんそれは女の子特有の華奢な体つきを窺えるという利点こそあったが、しかし乳首との自分との関係性についてはそれほどの変化はなかった。夏の日のそのような乳首も、冬の5枚ほども服を着重ねた少女の乳首も、ブラジャーという装置によってほとんど一緒のものとなっていたのだ。それほどまでにブラジャーの壁とは厚い。
 しかしそのさしものブラジャーも、それそのものが公開される段になってしまえば、これまでの強さを保ちつづけるのは難しかろう。ジャンプの際に巻き上がるTシャツのように、平常時において公開されているものは、剥がれうる可能性を持っている。可能性よりもいっそのこと、覚悟と言ってしまっていいかもしれない。外に出されるものは、失われうるのだ。
 つまりブラジャーは隠蔽されてこそあのような力を発揮できていたわけで、それが表面に出てしまうということは、もはやブラジャーは「乳房をすっぽりと厳格に包み守る要塞」ではなく、「乳房らへんに着けるファッション」にすぎない。そしてそれは容易に外れうる。
 これにより、いよいよ「乳首チラ」時代の到来である。