乳首をめぐる冒険 2

 
 そう言えば「ヘソ出し」というのが流行った時期があった。
 そのとき臍は初めて、大っぴらに見せるものへと変身したわけだ。素肌が隠された時代から、脚が出されるようになり、肩が出されるようになり、そしてついに少女は臍を見せるようになった。
 その流れでいけば、もう乳首なんてすぐ目の前じゃないかと思う。
 あるいは臍がそうであったように、はじめのうちはチラッとでもいいと思う。夏の日にジャンプをしてTシャツが浮き上がり、一瞬だけ臍が見えてしまう。そのような感じで乳首が見えればいい。僕なんかは悪い癖ですぐに脱がしてしまいたくなるが、やはりファッション業界のようにそうやって、ゆっくりと徐々に女の子たちの抵抗感をなくしてゆくのが正攻法なのかもしれない。
 だからまずはチラッと乳首が見えればいい。
 ただしそれには大いなる障壁がある。そう、ブラジャーだ。臍が中流家庭だとしたら乳首は上流である。ガードが堅い。厳格な父親かのようにブラジャーは乳首を包み込んでいると思う。そしてそれが存在する限り、乳首を「乳首チラ」の次元まで持ってゆくことはきわめて困難だ。それは「ブラチラ」にしかならない。
 果たしてこの問題はいかにして解決すべきか。大いに考える。そして考えた末にあることに気付いた。この難事業についても、ファッション業界はやはり、とっくの昔から取り組んでいたのだ、ということだ。
 すなわち「見せる下着」である。
 さすがである。箱入り娘をモノにするためには、まずは厳格な父親を攻略しなければならないという作戦。脱帽だ。なんと慎重な作戦か。