5分の4同居人

 
 ある日ぱぴこさんが左右で別の靴下を履いていたので驚く。
 さらにその理由(理由があるのだ)を聞いてより驚いた。
 すなわち「一方の靴下の片方が見つからず、それを探さなければならないのだが、探すにあたり片方を身に着けていなければ、このなくなってなかったほうの片方を何度も「見つけた!」と思ってしまう、だから履いている」と言うのだ。
 なんかよく分からないが天才っぽい考え方だと思った。僕には生まれない考え方である。手元にあるほうの片方を手に持ったまま片割れを探すというのならまだ思い浮かぶかもしれないが、それを履き、そのために嵌めるものが見つかっていないほうの足には別の靴下を履かせておくというのは無理だ。常人にはできない発想である。
 いちばん大事なものは案外いちばん近い所にある、という教訓があるけれども、この話はそれのことも思い出させた。いちばん大事なものを探すには、自分自身にもいちばん大事なものがなければいけない、あの子をゲットするためにはハートを磨くっきゃない。つまりそういうことだ。
 ちなみにこの数日後、パソコン操作のために携帯電話からminiSDを取り出したぱぴこさんが、使用後にそれをどこかに放置してしまい探すとき、本当に何度もminiSDをパソコン対応のSDサイズにするためのアダプターで「見つけた!」と叫ぶのを目にし、ますます驚いた。