一題十句 「浴衣(夏)」

 
 しかし浴衣と言えばなんと言っても高浜虚子の「浴衣着て少女の乳房高からず」だろう。
 x軸を「エロ」、y軸を「品位」とした場合、もちろん必ずしもそういうわけではない(と信じたい)が、大抵の作品の座標はそのふたつの軸において反比例するわけである。「品位」を重視しすぎると「エロ」としてのパワーは軽くならざるを得ないし、一方で「エロ」を高めすぎれば往々にして「品位」は低下する。ちなみに言えば前者の場合ならばそれは「毒にも薬にもならない作品」になるに過ぎないけれど、後者の場合だと「そもそも作品として受け入れられなくなる」から細心の注意が必要であると思う。
 そしてその見方に則り考えた場合、虚子の句は非常に絶妙なバランスの上に成り立っていると思うのだ。たとえば西東三鬼の「白馬を少女けがれて下りにけむ」という、これも好きな句であるけれども、これなんかだとちょっと「エロ」が強すぎて「品位」が下がってしまっている感がある。それに対し虚子の句は「浴衣」「少女」「乳房」という3つの「エロ」を高めそうなキーワードが使用されていながら、尚も「エロ」に傾きすぎずにバランスを保っているのだからすごい。これこそが僕の詩の目指すべき地点であると思う。
 
 浴衣着てソフトボール部エースなり
 ブラジャーを初めて着けし浴衣の夜
 浴衣着て特進クラスの夏祭
 ミルキィで柑橘系で浴衣かな
 女子トイレ浴衣をとめら長行列
 サイダーの濁り飛び出て浴衣かな
 有る程のブラジャー外せ浴衣の夜
 大花火乳首尖りし浴衣かな
 季重なり浴衣の下に水着かな
 浴衣着た少女の乳房超舐めたい