読了

 
 「魍魎の匣 分冊文庫版 中」 京極夏彦 講談社文庫
 中。じわじわと物語が収束に向かっている。
 しかし読んでいて意外に思ったことに、この話の印象って結構あっさりしている。
 もちろん物語はいろいろな要素が入り組んでいて複雑なのだが、詰まることろそれは「出来事の発生」と「出来事の説明」に過ぎないと言うか、あるいはそれは「出来事」と言うよりも、物語中で発生することなのだが、「設定」という名称のほうが正しいように思える。
 ……話が観念的だな。
 要するに「出来事」自体についての描写が、想像していた以上に軽いので驚いた。話に臨場感がないと言ってしまってもいいかもしれない。だが妖怪小説と言いながら、ともすれば普通のミステリよりもよほどドロドロしていない描写っぷり、なのにいちど読了した僕のイメージとしては、圧倒的な破壊力のある物語像を抱かせていたのだから、得体は知れないけれど、やはりとにかくが特別なのだなと再認識した。一体なんなんだろうな、これを成立させている要因は。文章か。構成か。どっちもか。