読了

 
 「魍魎の匣 分冊文庫版 上」 京極夏彦 講談社文庫
 3日かかって上巻を読みきる。9月半ば発売の「おんもらき」を読むのはいつのことか。
 350ページほどかけて、物語はじわじわと展開している。全景はまるでまだ見えない。
 ところでこの巻の中で、京極堂が初対面の鳥口の素姓を言い当てるという場面があるのだけど、それを読んでいて思い出したことに、高校のころの健康診断のことがある。耳鼻科のコーナーだったのだが、医師と一対一で向かい合い、医師がパナップを買うともらえるような長い木製のスプーンみたいのを持ち、僕の鼻の穴を拡げ中をさっと確認した結果、こう言ったのである。
アレルギー性鼻炎ですか」
 これには大いにびっくりした。なんで知っているんだ、と。
 あるいは医学的な知識がないためさっぱりだが、アレルギー性鼻炎の者の鼻の穴の様相は健常者に較べて一目瞭然で異なるのかもしれない。しかしだとしたら、それもそれで大いにびっくりなのだ。鼻の穴の中のことについて、そんな自覚は一切なかったからだ。どちらにしろショックである。
 そんなことを思い出した。