戦場へ

  
 諸事情あって部屋の大掃除をしているのだが、物が多くて困っている。
 物が多いというか、紙類が多いのだ。紙類って捨てにくいね。まあそれじゃ例えば大量でも捨てやすいゴミの品種とはなんなのかと言えばよく分からないのだけれども。
 紙類とはすなわち大きくふたつに分けて、書籍類とプリント類である。これまでこの部屋で生活していた日々で無頓着に増やしていたそれたちは、そのすべてをただただクローゼットにぶち込むという保存方法をしていた。だから部屋の大掃除とは、つまりそれとの戦いと言っていい。
 片付ける前に一枚でもあの惨状を写真を撮っておけばよかったかと今になって後悔しているのだけど(絶妙のバランスだったし)、とは言え一心不乱に突き進んだ結果として前線はかなり進行し、実はすでに全体の半分ぐらいは攻略したといって言い。
 しかしまだ安心はできないのだ。体積という意味ではたしかに半分ほど処理されたわけだが、掃除の難易度ということから見ると、ここからが勝負だとも言える。
 なぜならここまでの勝負は、要するに「要る本」を脇へ、「要らない本」を(ブックオフへ持っていくための)紙袋へ、という分類をするだけの単純作業だったからである。
 ここからは違う。書籍類を打ち破ったあとに待ち構えるのは、プリント類というタチの悪い軍団なんである。すなわちワープロで書いたものを印刷したやつや、あるいはそれよりも以前の、紙に手書きされた処々の書きもの。ノート類もこれに入る。これらが溶けて融合するんじゃないかという感じに何層にも積み重なっているのだ。累々と。
 これはきつい。これまでとは較べものにならない死闘になるのは絶対である。なにしろなるべくならより多くのものを捨てたいが、中にはきっと捨ててはいけないものもあるわけで、そういった判別をするためには、きちんとそれらの内容を吟味しなければならないからである。これがもう。ひどい苦行であると思う。
 中学生の頃に書いていた日記とか、きっと出てくるのだけど、出てきたときはどうしよう。この文章を書きながら沸々と思い出してきたけれど、そう言えばそれくらいの一時期、僕はひとりで「男の先輩」と「後輩の彼女」になりきって交換日記とか書いていたはずなのだ。使うペンを変えて、女の子のほうはカラフルになんかしたりして。
 今にして思えばこれってかなり僕の原点のような気がしないでもないけれど、どちらにしろきついことには変わりはない。不意打ちを掛けられないよう、きちんと心の準備をしておかなければと思う。