プロッペッパローニ14世(王族の末裔)

 
 ……つまり言いたいんはな、おっさんの筆があるやろ。弘法大師が遺したと言われるあの筆や。つくしんぼや。春の季語や。「十四の をとめ腹ぺこ つくしんぼ」や。おっさん心の俳句や。そいでな、おっさんのこれが筆なんやとしたら、じゃあ紙はなんなんやいう話やろ。なにしろ紙はフィールドやねんで。フィールドを持たないストライカーはただの脚の短い人なんやで。せやから紙を持たんおっさんもまた、ただのペニスおっ立てとる元気なおっさんなんやで。っておい。ペニスて。言うてもうとるやないか。ペニス言うてもうた瞬間に、おっさんのおジョイジェイもお空海もつくしんぼも、単なるペニスになってしもたやんか。……ああそやで。白状するわ。そうなんやで。これな、ペニスや。レトリックに騙されたらあかん。かわいいコンドームに惑わされたらあかん。これはペニスなんやで。凶暴な性質を持つっちゅうか、むしろ凶暴そのものやねんで。舐めたらあかんわ。いや、実際には舐めたらあかん言うのは一概には言えんけどな。舐めることから始まるスキンシップもあるでな。あるいは脚でコいたりするのもありやで。受け入れるだけが愛やあらへんねんな。まったく奥が深いで。あ、おっさんのは奥深くないで。奥深いのはお嬢ちゃんのほうやからな。おっさんは奥深く掘削するほうやな。お嬢ちゃんの奥の奥までな。ただし奥まで行けば行くほどいいっちゅうんは現代暴力社会の引き起こした誤解なんやで。そのこと忘れたらあかんで。おっさんの好きな言葉でこういうのがありよるわ。座右の銘っちゅうやつやな。「知ってる? 女の子の一番の性感帯は、頭の中にあるのよ」。おっさんこの活字を目にした瞬間に、世の中のすべてがクリアに見えた気がしたもんやな。たとえばベーシストの話があるやろ。ベース音は子宮を震わせるが故に、弾き鳴らせば弾き鳴らすほどに女子は感じ、ベーシストに恋をしていく、っちゅう例の有名な話や。あれはたしかに事実かもしれへんで。しかしな、それは要するに科学やねん。周波数とかそういう類の話やねん。それに対し性感いうんは科学やないねん。せやから女子の子宮を震わせる音を奏でるベーシストよりも、女の子の頭の中の性感帯に照準を絞って言葉や詩を唱えるおっさんのほうが偉いねん。そういう結論や。それでなんの話やったかな……そやそや、おっさんのペニスを筆としたら紙はなんなのか、いう話やな。言うまでもないやろ。おっさんの掘削機が突入するところや。そうや。お嬢ちゃんがいま思い至って、その瞬間にビクッとしたその部分や。……ん? なんや、えらい勢いで首振りおってからに。ああ、お嬢ちゃんさてはあれやな。もしかしておっさんが私の皮を破る狼なんやないか思うたんやろ。はっはは、お嬢ちゃんエロやなー。エロスやなー。ホンマ毎日がエロ曜日やな。ちゃうわ。阿呆か。おっさんそんな邪悪で無粋なことするようなおっさんに見えるか? おっさんお嬢ちゃん破瓜したいんやったら、こんな昼間に行動起こす意味ないやろ。夜陰にまぎれて事を起こすやろ。まあたしかにおっさん暗い所と明るい所では明るい所での行為のほうが好きやけどな、せやけどそうやないねん。おっさん求めてるんはそういうこととちゃうねん。おっさん求めて止まないんは、同意いうもんやねん。同意の上でお互いにリスクとリターンを得られたらええんちゃうか、人類みな幸せなるんちゃうか、いうことやねん。提唱したいねん。MOTTAINAIやねん。そいでな、ええか筆の話に戻るで。つまりおっさんのペニスが筆やとしてな、紙がお嬢ちゃんの膣なんやとしたら、ほな硯はどこなんか言う話になるやろ。ならざるを得ないやろ。そこで思い浮かぶ箇所はひとつしかあらへん。そうやな。さっきからおっさんがおぞましい心持ちでチラチラ見やっとる、お嬢ちゃんの咥内や。菌まみれのお嬢ちゃんの口の中や。そいで例えばお嬢ちゃんの硯がおっさんの筆を舐めるとするやろ。そうするとな、おっさんはお嬢ちゃんの菌を擦り付けられるいうリスクを負うことになるわな。えらいリスクや。せやけどその代わり、おっさんには様々なリターンが来るわな。来るねん。せやからこれは成立や。それでお嬢ちゃんの場合はやな、まあたしかに現にこうして学校に遅れるいうリスクは負っとるわな。そら申し訳ないわ。せやけどな、その代わりおっさんの汚なない筆が口の中を掃除することにより、咥内はピカピカや。お嬢ちゃん女子校か? ほなら憧れの先輩の顔を思い浮かべてみい。先輩の歯、ピカピカやろ。それなんでか分かるか? その答えがここにあるねん。おっさんの掲げるこれはある意味で、シンデレラに魔法をかけるステッキなんかもしれんで……。(つづく)