おそるべきスカートの丈冬なのに

 
 西東三鬼という俳人が気になっている。
 エロティシズム俳句として「おそるべき君等の乳房夏来る」が紹介されていたあの人だ。他に「白馬を少女瀆れて下りにけむ」なんていうのもある。エロ以外でも「水枕ガバリと寒い海がある」など、けっこうトリッキーな表現をする人だったらしい。
 それで今、俳人全集みたいなシリーズのこの人の巻を読んでいる。なかなかおもしろい。
 そしてその本の巻頭に、三鬼の人生における折々の写真が紹介されていたのだが、それを眺めていて思ったことがある。
 逆におもしろい、と。
 なんていうか、時代もあるのだろうが、写真に写っている三鬼の写真はどれもきわめて真面目そうなのだ。若い頃はスーツを着てキリッとしていて、歳を取ってからは和服をサラッと着ている。実にステキでカッコイイ。
 しかし縁側に座布団をひいて愛犬ベンジャミンと穏やかに戯れる三鬼なのだが、「白馬を少女瀆れて下りにけむ」なのである。「おそるべき君等の乳房夏来る」なのである。頭の中はしょうもないことでいっぱいだったに違いないのだ。そしてそういうことを考えるにつけ、やはりおもしろいじゃないかと思う。
 僕も今後の人生で、そういう空気作りを心がけていきたい。しょうもないことを、ふざけた雰囲気の中でやっても効果的じゃないもの。
 でもしょうもないこととのギャップを生み出す、真面目なムードってどうやったら出来上がるんだろう。まずそれを考えるところから始めなければいけない。
 そしてそれに思いを馳せる思案顔は、あるいは非常に真面目なムードを発しているかもしれないとも思う。シャッターチャンスだ。