読了

 
 「またまた へんないきもの」 早川いくを バジリコ
 かなり久し振りに読んだ生きものの本。おもしろかった。紹介されている生きものの生態がそもそももちろんたいへんおもしろいというのはあるのだが、作者の書き方も工夫が凝らされていていい。やっぱりずっと同じ調子じゃおもしろくないものな、書いている本人が。
 「へんないきもの」=往々にして希少生物ということで、話は多分に環境問題へも広がっていく。それを読んでいて思ったのだが、環境という視点で捉えた人類の未来には希望なんてひとかけらもないのに、どうして僕らはパニックを起こさないのだろうか。
 生きものはすべて自分の遺伝子を次代へつなげてゆくことが至上なのであり、それが近い将来に破綻することは明白という状況において、そして人間は唯一そういう未来を予測できる能力を持った生きものでありながら、そんな生きもの中最大の恐怖の自覚を持ちながら、なぜか人間はパニックにならない。自覚しつつも狂わず生きている。これはなぜだろう。
 そこで志賀直哉が「生きものが命をつなげていきたいのは感覚としては分かるが、どう考えたってそのつながりが無限につづくわけでは決してなく、どうせいつかは絶えるのに、どうして我々はこうまでして命をつなげようと躍起になるのか」みたいな内容のことを、(美文で)言っていたことを思い出した。
 そもそもそういうものだからパニックにならないのか、それともそもそもが狂っているのか。