鈴木狂歌

 
 笹公人の「念力家族」(宝珍)を読んだ。歌集である。
 読み終えた結果として、短歌と狂歌の違いが分からなくなった。この本に収録されている歌たちが狂歌でなく短歌なのならば、果たして狂歌なんてものは存在するのだろうかとさえ思う。貪欲に笑いを求める57577。これって紛うことなく狂歌だろう。でもやっぱり短歌なのらしい。じゃあ狂歌なんてないのかもしれない。なきゃないでいい。
 どちらにせよ僕の中ではこの本は、「さまぁ〜ずの悲しい俳句」なんかと同系列だと思った。実際として両者の発想にそれほどの差異はないのかもしれない。もちろんこれは「念力家族」のことを貶めているわけでは決してなく、要するに僕はおもしろければそれでいいのだからぜんぜんいいのである。
 だからもちろんこれ自体はとても愉しく読んだ。著者のブログを見て見損なった面はあるけれど、それ以外はなんの文句もない。参考にしたいと感じる要素さえあった。作品の大半は詩情とかとはかけ離れた地点にあり、いちどおもしろいと感じたそばから色褪せていくが、とりあえず一読している間はたしかにおもしろかった。っていうかやっぱり狂歌だと思う。