女子中学生コウコツ文字

  
 『P12』
 
 今ぼくの中でブラジャーがブームなのでそれを例にして話をするが、ひとりの女子中学生が自分のブラジャーをクラスメイトに貸すことになった(理由はなんでも考えうる)場合、それを持っていくのを忘れないようにするため手の甲に『ブラジャー』と書くことはありえないわけである。なぜならそれはそれを誰かに見られたら恥ずかしいからであり、『セイカン』の際にも書いたが、「公開される」というコウコツ文字の特性上、恥ずかしい文面は少女本人によってなんかしらのカムフラージュをして記されるということになる。だからブラジャーの場合では、『ブラ』や『ぶら』でもまだ分かりやす過ぎるため、差しあたって考えうるのは『らじゃ』ということになる。これならば僕のごときコウコツ文字解析の専門家でもない限りは、大抵の一般人においては「「了解」という意味の「ラジャー」なのかな? かわいいな」などと考えるのみであり、僕のように「なるほどこの女子中学生はブラジャーを忘れるわけにはいかない理由があるのだな」そして「「ラジャー」に被せてカムフラージュしたつもりなんだろうが、「ラジャー」にはスラングで「(男が)女と性交する」という意味もあるということ、だからそんなことを手の甲に書いて電車に乗っていたら、痴漢とかされてもぜんぜん文句は言えないのだということをこの少女は知らないのだな」と考えることはないわけである。コウコツ文字というのはそういう性質のものなのだ。そのように考えてこの『P12』に立ち向かった場合、やはり素人ならば「ああ、教科書の12ページが今日はこの女子中学生にとって重要なんだな」となるわけだが、僕なんかになるとさすがに違って、そこから即座にして目の前にいる真面目そうなメガネ少女の、密かなる乱交願望を察してあげることができるわけである。
 ここで都々逸を3句ほど。
 P12とは勉強熱心 予習復習いく日分
 12Pとは意欲旺盛 教科書めくる手つきにて
 ぐるり囲まれぶっ掛けられり 12ページの知識量