七五調について

 
 寿岳章子という人の書いた「日本語の裏方」(創拓社)という本を読んでいる。七五調を中心とした日本語周辺のことについていろいろと書かれている。上の創作いろは歌も、この本で創作例が紹介されていたので奮起されてやってみた次第だ。
 ところでこれを読んでいてちょっと不思議だったのは、この著者が七五調について語るその口調が、どこか七五調についての擁護のようであるということだ。あるいは言い訳と言ってもいい。どう考えても正面から七五調を讃するような感じではない。
 それで考えてみたのだが、そういえば七五調っていうのは、日本語民族にとり心地よいリズムであるがゆえ、戦中には軍歌や唱歌に多く使用されたという過去がある。それにより国民が扇動された部分も決して小さくないはずである。なにより国歌もまた七五調の短歌である。
 それで僕は文学史的なことはぜんぜん学んでいないからここからはまったく想像なのだけど、そういった経緯により、この著者のように戦後の有識者たちには、七五調を忌避するという風潮があったのかもしれないと思う。耳通りがいいからと言って七五調を蒙昧に愛誦することに、堪えられないほどの嫌悪感を抱いていたのかもしれない。
 そして僕らはそういう記憶がないから、けっこう素直にノリの良さだけで七五調を使用してしまっているかもしれないと思う。
 よく分からない。