電車の中で見つめていた女子中学生、その子がそっと髪をかき上げたとき、手の甲にマジックでなにか書かれているのを発見した。ようく目を凝らして、その文字を確認する。 そしてようやく読み取ったその文面はこうだった。 『あみもの』 なかなかいいと思う。

「魔王」 伊坂幸太郎 講談社 感想……まずいなあ。内容的にも、伊坂がこういうのを書いたというその事実にも、そのように思った。自分もまた創作者を目指す者にとり、好きな作家の小説を読むことは、それがおもしろければおもしろいほどに、ある種の痛みを伴う…